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                            2012/7/2 75号  
目次:
●レポート:脱原発宣言とランドスケープ(その2の2)

地球白書  会友 千賀裕太郎


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 前号で、メルケル首相に「原発廃棄宣言」を即断させたドイツ市民の圧倒的な環境行動
のベースには、地域コミュニティの一員としての市民の、日常の暮らしの場への関心と
ハイマート(ふるさと)への愛着があると述べた。そして、全土に展開する都市・農村
のほとんどが、ある種の秩序を共有しつつ、それぞれに個性的な景観美を保持している
と紹介した。そもそも人間にとって「ふるさと」はどのような存在なのか。地域間の格差
は小さく、地域間の個性差は明瞭な、ドイツの都市・農村から学ぶところは小さくない。

 日本では、戦後の高度経済成長時代に地方から都会への移住が相次ぎ、「ふるさと」は
「遠くにありて思うもの」に過ぎなくなった。この過程で地域の「土地」は、そこに
生きとし生けるものが豊かに住み続けるための場所というよりも、時勢に合わせて経済的
利益を貪るための手段に過ぎなくなった。遺憾ながら、これが日本の現実ではないだろうか。

 原発立地地域は、その一つの典型といってよい。いずれも農山村が選ばれ、電力会社を
通じて国の政府から多額のお金を交付され、原発なくして地域経済は立ち行かなくなる
ように仕向けられて、安全で美しく豊かな「ふるさと」を求める地域住民の声は、封じ
込められている。「上からの経済」が、地域の自律的な経済を圧殺するのは、民主主義
そのものへの狼藉ではないのか。

 私はいま、日本の民主主義のありかたそのものを、より具体的に問い直す時期にあると
考えている。この間の長期にわたる国政の混乱を見ても、選挙における投票行動だけで
民主主義の内実が担保されるものではないことは明らかである。一人ひとりが暮らす
「地域」をより良いものに変えてゆく、下からの自発的主体的な市民の「地域計画」行動
を促すような条件ができているのか。これを「計画民主主義」と呼ぼう。計画民主主義が
不十分な社会では、地に足の付いた「環境意識」も、健全な政治も育たない。

 計画民主主義では、土地利用のあり方をめぐる論議と決定のあり方如何が、試金石となる。
一例をあげよう。ドイツ等西欧には「開発利益の公共還元」という土地税制がある。政府が
行う道路整備や治水事業などの公共事業によって、土地の価格がにわかに高騰し、これを
売ると大きな利得が生じるときに、公共事業に起因するとみなされる地価上昇分(開発利益)
を当該土地の売主から税金として徴収するという制度である。この制度は土地を「利権」
の対象にさせない機能を果たすので、計画民主主義の重要な基盤となっている。

 日本にこの制度は不在であることが、計画民主主義の成長プロセスを阻害し、民主的な
政治を基礎から掘り崩している。もっとも大正期に旧都市計画法の原案が国会に上程された
当初には、開発利益の公共還元の規定が含まれていたが、最終的に制定(1918年)された
法文からは抜け落ちていた。おそらく、この規定が及ぼす影響の大きさに“賢く”も
気づいた勢力がいて、そのことが自らの政治活動にとって不利となる恐れありとみなして、
法案の修正を企てたのであろう。

 大震災と原発事故、そしてそれ以降の政治・経済の推移は、日本の社会システム全体の
見直しを強く求める世論を喚起している。計画民主主義は、時間はかかるが本質的な議論
のテーマとして重要と思うが、いかがだろうか。詳しくは拙編著の近刊、「農村計画学」
(朝倉書店、2012年4月刊)を参照されたい。

次回配信予定:7月20日(金)


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