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                            2013/10/8 80号  
目次:
●レポート:米国における原子力発電の衰退(その2の2)


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Eco-Economic Indicator
米国における原子力発電の衰退(その2の2)
by J.Matthew Roney

 一部の電力企業は原子炉の新設や既存の原子炉の発電容量を増加する「出力増加」の
申請を、近年、取り下げるようになってきた。例えば、2013年5月には、デューク・
エナジー社(Duke Energy)がノース・カロライナ州の2基の原子炉の新設に関する
NRCへの申請を保留にした。電力需要の低迷が理由である。8月には、デューク社は
フロリダ州において建設予算額247億ドルの2基の原子炉建設計画を撤回したが、
ここでは、すでに10億ドルが費やされており、その殆どは電気料金で回収されていた
のである。電力企業が危惧しているのは、2013年の半ばに各州の「先行コスト回収
法」が改正され、より高い電気料の請求による建設計画推進の資金作りが困難になること
である。

 6月には、国内最大の原子力企業であるエクセロン社(Exelon)が、ペンシルベニア州
とイリノイ州の発電所の出力増加計画を断念した(2013年の9月の早い時期に、
各電力企業が取り下げた少なくとも6件の出力増加申請のうちの2件)。 ほぼ1か月後、
フランスの電力企業であるフランス電力(EDF; Électricité de France)が、
ニューヨーク州とメリーランド州の原発を運営しているエクセロン社との協力関係の
解消を公表した。事実、EDFはもはや米国の原発相手にビジネスを継続する意思は
ないようで、むしろ米国の再生可能エネルギーへの転換にこそ関心が向かっている。

 今年になってすでに、合わせて360万kWの発電容量を持つ4基の原子炉が永久閉鎖と
なっている。第1番目は、デューク社のフロリダ州のクリスタル・リバー
(Crystal River)原子炉。運転許可は2016年まで有効であったにも関わらず、
デューク社は必要な修復に経費を割くよりも閉鎖を選んだのである。次いで、ドミニオン・
エナジー社(Dominion Energy)は廉価なガスとの競争が困難になり、稼働39年の
ウィスコンシン州のケワニー(Kewaunee)原子炉を閉鎖した。2033年までの稼働
(延長)許可を得たばかりであった。さらに、6月には、南カリフォルニア・エジソン社
(Southern California Edison)がサン・オノフレ(San Onofre)の2基の原子炉を閉鎖
したが、蒸気発生器の配管破損による微量の放射性物質の漏洩が原因で18か月も稼働
停止していた後のことである。この4基の閉鎖により、米国には100基の原子炉が
残ったが、平均運転年数は32年である(フランスは 58基で第2位)。

 米国の原子炉のおよそ半数はいわゆる「自由競争地域」に存在しているが、これらからは
とくに閉鎖が続くであろう。この地域にあっては、原子力は市場によって他の技術や価格
との競争にさらされているからである。バーモント法科大学におけるマーク・クーパー
(Mark Cooper)の2013年の報告
(http://www.vermontlaw.edu/Documents/PublicRiskPrivateProfit_Cooper.pdf)
によれば、ケワニーのような自由競争地域の原子炉の9基が 20年の寿命延長を認可
されてはいるが、とりわけ閉鎖の危機にある、という。そのうちの2基には、すでに
引導がわたされている。

 バーモント州唯一の原子力発電所は2014年に、ニュージャージー州にある国内最古の
オイスター・クリーク(Oyster Creek)原子力発電所は2019年に、それぞれ閉鎖予定である。

 残りの米国の原子炉は、州当局が原子力発電事業者に一定の利益を保証する電気料金を
設定をしている「調整地域」にあるが、それらに対してさえ、市場はそう長くは存続を
許さないであろう。クレディ・スイス銀行によれば、老化する原子炉の維持・運営コスト
は年に5%ずつ増加し、核燃料はこれを上回る年9%の勢いで上昇している。他方で、
風力やソーラー・パワーにおいては発電出力の急成長と共に、規模拡大によって発電
コストは低下し続けているのである。

 核廃棄物の扱いはもう一つの巨額の難題である。30年以上の間、米国政府は約150
億ドルをかけて核廃棄物の集中貯蔵所を認可しようとしてきたが、その間に検討の対象
となった貯蔵サイトの案はネバダ州のユッカ・マウンテンのみであった。このサイトに
おける安全性やネバダ州で「反対」の極度の高まりが懸念されるなか、オバマ政権は、
この計画の全面撤退に動き、他の選択肢を探ることになった。

 連邦控訴裁判所は2013年8月、「NRCはこのサイトの適合性を見直すべし」と
裁定したが、その間にも核廃棄物は蓄積を続けているのである。現在、35の州にわたる
80か所の暫定サイトに保管されている7万5000トンの廃棄物が、2055年まで
には2倍になると予測されている。このことは原子力発電拡大の展望に大きな影響を
与える。カリフォルニア州やコネチカット州やイリノイ州を含む9つの州では、核廃棄物
問題の解決が得られるまで新しい原子力施設の建設を禁じた。 

 事故発生時の原子力発電事業者の損害賠償責任額の低さも、納税者には看過できない
ことである。原子力発電事業者は保険として120億ドルをプールしているが、国民は
遥かに大きな被害に対して賠償をすることになる。2011年の福島の原子力災害に
対する除染と補償は少なくとも600億ドルのコストになると見積もられているのに対し、
自然資源防衛協議会(NRDC)の試算
(http://www.nrdc.org/nuclear/indianpoint/files/NRDC-1336_Indian_Point_FSr8medium.pdf)
によれば、ニューヨーク州インディアン・ポイント(Indian Point)原発が深刻な事故を
起こした場合、福島の10倍から100倍を要する。このリスクは、2013年9月29日
にクローズアップされるであろう。この日、インディアン・ポイントの2基の原子炉のうち
の1基が、初めて認可の満期を迎えながら運転継続することになるからである。

 ジョージア州とサウスカロライナ州で建設中の原子炉が実際に動き始めると、風力や
ソーラーなどを含む他のエネルギー源のいずれをも大きく上回る発電コストになるもの
と見られている。老朽化した多数の原発を新たな原発に置き換えることは、あまりにも
コストが膨大である。既存の原子炉に関する出力増加の申請を撤回するとなれば、
原子力発電事業者は「新規建設を回避して、既存発電所の発電容量の増加を図る」
という選択肢も失うわけである。

 NRCは 現存する米国の原子炉の3分の2強に対し、20年の運転寿命延長の認可
を下した。残りの原子炉もおそらく延長承認される。これらの原発が許可年限に達した
としても―― 過去の経験からはありそうもないが―― それらに置き換わるべき
新しい原発の稼働がないとしたら、米国最後の原子炉は、2050年代の末には閉鎖
されるであろう。原子力発電業界の望みはボーグルとサマーの新規原子炉に託されている。
 米エネルギー省長官アーネスト・モニッツ(Ernest Moniz)が最近のインタービューで
答えている通り
(http://thinkprogress.org/climate/2013/08/15/2469211/fifteen-minutes-with-moniz/)
現在建設中のプラントが莫大なコスト超過や工期延長を重ね続けるのであれば、
「米国において、原子力発電の未来は見えてこない」のである。
                               (訳:和田俊郎)
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